わっぱん訪問記

(2019年5月18日に名古屋市北区にあります「わっぱん」を訪問しました。)

黄色い建物が目印

 

生い立ち

以前は、障害のある人は街から離れた場所に隔離されていましたが、それはおかしいと、街の中でみんなと共に生きることができるように、1971年に「わっぱの会」が生まれました。「わっぱ」とは子どもの純な心で輪のようにつながろうという意味。

一軒家で3人の共同生活。3人のうちの1人の障害者の働く場をなんとか確保するために、小さな倉庫で共に働く場を作りました。

1984年、みんなで働いていけるようにと、無添加・国産小麦パン「わっぱん」の製造が開始されました。ここから仕事が増え、人が増え、経済的な発展が生まれ、今日への基盤ができました。

伺った日は土曜日。いつもよりも少ない人数ということでした。

 

進化する「わっぱん」―「ソーネおおぞね」

「ソーネ」は、大きな団地の1階にあり、多目的ホール、カフェ、「地域の駆け込み寺」相談室、リサイクル事業部、わっぱんのパンや、愛知県産の食材、個人の方が作った手作り品を販売するショップに分かれています。

ひとりでもみんなでも居心地のいい施設です。私たちが行くと、カフェには小さな赤ちゃん連れのママグループから、お一人様の年配の男性まで。実に幅広い年齢の方がいらっしゃいました。団地には高齢の方も多く、こんな施設が団地の一角にあるのはとてもありがたいことだと思いました。ショップは、大手メーカーのビールなど、お客様の要望を聞いて柔軟に商品を入れているとのこと。その柔軟さこそ地域から愛されている理由なんだと思いました。さらに、1か月に1回、「子ども食堂」を開催し、多い時には200人も来店されるそうです。

誰でも受け入れるここは、これからの新しいコミュニケーションの場になると思いました。以前よりもさまざまな人が共存する今の時代。近所付き合いが希薄になっている中、でも人間の本質は変わらず、どこかで人とのつながりを求めているのではないでしょうか?ソーネのような空間は、年齢、国籍問わず、そして、職業も様々、貧しい人、富める人、健常者、障害者など、いろんな線引きは無しにしてみんなが美味しいものを通して共存できる場としてオルタナティブなかたちなのではないかと思いました。

ソーネHP
https://sone-ozone.com/

ショップとカフェスペース

ショップにある手作りの雑貨は、個人で作られたものとは思えない完成度。

資源回収のコーナー 殺伐としそうなところだが、きれいに整理・整頓されている。

 

出来立てがすぐに並ぶ、パンコーナー。

 

「ソーネ」オリジナルパンは生クリームやマロンクリームがたっぷり入って、魅力的♪

 

こちらは別棟にある新工場。クッキーなどはこちらで製造しています。

 

「わっぱん」のパン

わっぱんのこだわりは、「安心・安全の食材で手作りしています」です。

小麦粉は、北海道産小麦と地元愛知県産の地粉を使用しています。小麦粉本来の純粋な香ばしさ、豊かな味わい、焼き上げた時のもっちり、ふっくらした口当たりが特徴です。輸入小麦に見られるポストハーベスト(収穫後農薬)残留の心配もなく安心です。そのほかの材料も、JAS認定や海外有機認証を受けているもの、国産品、添加物をできるだけ使用していないものなど、ただ美味しいだけでなく、安心、安全に配慮したこだわりの食材を厳選使用し、一つ一つ丁寧に手作りしています。

パンの副材料にはフェアトレードのチョコレートやコーヒー・紅茶の葉などを使用して、作る人と食べる人の幸せをつなぎ、さらに、日々の食卓に上るパンやお菓子を通してみんなが一緒に幸せに暮らせる社会づくりを目指します。

材料の小麦粉

 

営業の清川さんと弊社代表の田村

本当に楽しいお時間を過ごさせていただきました。

 

工場長の大倉さん 大倉さんの掛け声でその場が引き締まります!

 

森のおばけが完成

 

驚いたのは、重さをそろえるスピードの速さ

熟練の技を感じました

 

袋詰めまで、同じ工場内で。

 

出来立てを、見せてくださいました。

1つのパンを作るのに、3時間から5時間を要します。

 

取材中もどんどんパンができていきます。

 

見学を終えて

工場を見学させて頂き、私の障害者さんへの見方は大きく変わりました。勝手に、健常者が横で障害者さんの作業を見ている中で、簡単な作業だけをしていると思っていました。しかし、今回の取材で、自分の仕事に責任を持ち、黙々と的確に作業し、他の方の間違いを指摘し、正しい方法を教え合い、手薄なところには積極的に手伝いに行く、「仕事とは」ということを教えて頂きました。焼き上がったパンを大変誇らしく私たちに見せてくれていた姿は、こちらまで笑顔になる光景です。

白い作業着を着れば、みんな一緒。その通りだと思いました。

そして、今回のことを通して「共に働き、共に生きる」これは、なんら特別なことではないということに気づかせて頂きました。

わっぱんさんは、障害のある人だけでなく、社会的に排除されている人たちと共に働く「社会的事業所」をめざすとともに、高齢化したメンバーが安心して地域で生きていけるような社会参加活動の場も作っていくことをめざしていくそうです。(藤田)

 

 

 

おいしい昼食をいただき、ソーネの前で1枚

左から2番目が わっぱんの清川さん

右端は新工場ベーカリーハウスわっぱんの責任者 笠原さん