“土佐のかつおの花吹雪”のご紹介
花吹雪
(4128 土佐のかつおの花吹雪/通常は1週のみ)

エコポスト12月3回号の表紙特集は、高知県の竹内商店の土佐節。
この特集を組むきっかけになったのは、高生連さんからの
「加工品生産者取材レポート003」が届いたからでした。

読んでるだけで伝わってくるレポートだったのですが
紙面スペース上、全ての写真を掲載することはできなかったので
今日はそのレポート全文を紹介します☆

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原稿作成日:2009年11月18日(水)

土佐の鰹節生産者【竹内商店】の
鰹節製造工場へ取材に行ってきました!!其の一

10月某日、高知県土佐市宇佐町へ取材に行って来ました。
宇佐大橋
奥に見える橋は“宇佐大橋”です。

宇佐は昔より鰹の一本釣り漁が盛んな土地柄で、それとともに鰹節製造業も発展し、現在のような改良土佐節が発祥した土地でもあります。
「改良土佐節発祥之浦」石碑
「改良土佐節発祥之浦」石碑

もともと鰹を干すだけのものは古くからありましたが、江戸時代に煙で鰹を燻す製法が紀州で確立され、それが土佐に伝えらた後、バラ(小骨)抜き、本格的に薪で燻して焙乾し、カビつけして、天日干しで仕上げる、いわゆる現在の「本節(本枯節)」へと改良したのが、宇佐の播磨屋亀蔵と佐之助です。今から200年ほど前の江戸後期のことでした。その後、土佐藩内の鰹節産地へ、そして全国各地の鰹節産地へとこの製法が拡がっていくこととなります。

そんな宇佐には、今も伝統製法を受け継ぎながら本節を製造されている(有)竹内商店があります。
竹内商店は、現・家長の昌作さんの父、覚さんの代に本家から分かれ、新たに節屋を始め、昌作さんは2代目になります。

竹内商店の鰹節製造工場
※竹内商店の鰹節製造工場です。

午前9時過ぎ、竹内商店さんにお邪魔したところ、丁度「生切り」の作業の真っ最中でした。
生切りの作業
「生切り」とは、鰹を解体して形の良い節を作る作業で、数人がそれぞれの工程を分担して流れ作業で行われます。

土佐切りの作業
頭部を落し、ハランボや背びれを切り取り、内臓を取除く。そして「土佐切り」と呼ばれる独特のさばき方で鰹を3枚におろします。

「土佐切り」は頭部と内臓などを除いた鰹をまな板につくか、つかないかくらいの高さに吊下げて、さばく方法です。
土佐切りの様子
「土佐切り」の様子

「土佐切り」した後、尻尾側でつながっている皮1枚を切り離して、胴体を2枚にします。
胴体を2枚にします

背骨を片身から切り離して、3枚におろします。「土佐切り」は鰹の身を傷つけず、かつ作業を効率良くするための技法です。
3枚におろします

3枚におろした鰹の片身は更に背節(雄節)と腹節(雌節)の2つに割られ、1本の鰹が4つの節になります。サイズの小さい鰹は3枚におろした後、背と腹を分けず、片身がそのまま亀節と呼ばれる節になり、合計2つの節になります。
亀節と呼ばれる節になります

2対の雄節/雌節に分割された節
2対の雄節/雌節に分割された節

「生切り」が終わると、次に「籠立て」です。
煮籠の中に並べていきます
分割した節を1本1本丁寧に“煮籠”の中に並べていきます。この時の並べ方が悪いと、身の反った形の悪い節になってしまうので、節の並べ方一つとっても注意深い作業が続きます。

「煮熟(しゃじゅく)」中にお湯の中で動いて形が崩れないように鰹のアラなどを節の間に挟むなどして固定します。
固定します

煮熟(しゃじゅく)01

続いての作業は「煮熟(しゃじゅく)」です。
煮熟(しゃじゅく)02
丁寧に並べた節が動かないよう、積み上げた煮籠を釜の中に慎重に沈めます。今でこそ機械化されて一度に何枚もの煮籠を釜の中に入れることができますが、昔は1枚ずつ釜に入れていました。

「煮熟」中の釜
釜のお湯の温度は沸騰しない程度の約90℃。溢れた煮汁で火傷をしないように注意しながらの作業です。

煮籠を釜から引き上げ
「煮熟」中の釜です。

放冷
じっくり2時間ほど煮た後は、煮籠を釜から引き上げて、しばらくの間風通しの良い場所で節を冷まします(「放冷」)。
ナマリ節

高知ではこの煮た状態の節のことを「ナマリ節」と呼んでいます。このままでも美味しくいただけるので、地元のスーパーなどではご飯のおかずとして売られていたりします。
バラ抜き
「放冷」の終わった節を、今度は「バラ抜き」します。

バラ抜き作業ベテランさん
「バラ抜き」とは、毛抜きで節のバラ(小骨)を抜き、皮などを除く作業です。この作業も熟練の技が必要ですが、ベテランの方は手際良く流れるようにバラを抜いていきます。

バラ抜き作業03
この日は時間の都合上、残念ながら鰹節の製造工程の取材は「バラ抜き」工程まででしたので、製造工程のご紹介が途中で飛んでしまいますが、一連の作業と平行して行われていた、カビ付けした節を天日に干す作業と竹内商店の「焚き納屋」をご紹介します。

取材当日は快晴でしたので、本枯節の天日干しも行われていました。
本枯節を搬出します

カビ付けの室(ムロ)からセイロに乗せた本枯節を搬出します。
日当たりの良い広場にセイロを広げます

日当たりの良い広場にセイロを広げて、1日約4~5時間、カビ付けした節を天日干しにします。
天日干しの工程が繰り返されます

ゆっくり時間を掛けて

カビ付けは1番カビから4番カビまで行ない、その間カビ付け/天日干しの工程が交互に繰り返されます。鰹をさばいてから各工程を経て本節に仕上がるまで、実に4ヶ月もの時間がかけられます。
長い時間をかけて熟成
ゆっくり時間を掛けて行うのは、休み休みやらないと、節が割れたり、内部に隙間ができてしまうからです。
また長い時間をかけて熟成させることで、本節独特の深みのある旨味が作られることにもなります。

天日干し中の本節。日の光に照らされて、節表面のカビが綺麗な黄金色に輝いていました。
天日干し中の本節

火を焚く地下と地上部分5階からなる、竹内商店の「焚き納屋」です。
竹内商店の「焚き納屋」

焚き納屋の1階から上階を見上げたところです。各階は煙と熱が通るよう、鉄格子で区切られています。
1階から上階を見上げたところ
「焚き納屋」で行われる、煙と熱で燻して節の水分を抜く工程を「焙乾(ばいかん)」と言います。

焚き納屋の半地下の土間です。ここで火をおこして薪をくべます。
焚き納屋の半地下の土間

画像は以前にお伺いした際に撮影した「焙乾」時の火入れの様子です。
「焙乾」時の火入れの様子

竹内商店では、地元近くで調達した、なら・くぬぎ・しい、などの堅い木を燃料の薪として使用しています。
まき

「焚き納屋」5階から見た4階の様子です。「焙乾」も最終段階近くに入った節ですので、かなり水分が抜け、表面にタールがたくさんついた状態になっています。
最終段階近くに入った節

期間にして20日~30日間ほど燻して完成した“鰹荒節”です。実はこの荒節、今度竹内商店から新発売となった「土佐のかつおの花吹雪」の原材料です。
完成した鰹荒節

「土佐のかつおの花吹雪」は、土佐の近海で伝統の一本釣り漁で獲った鰹だけを使い、鰹節職人の竹内さんが丹精込めて仕上げた、まさに地産の“土佐節”と呼べる鰹荒節を削った、かつお削り節です。
近年は土佐近海での鰹の漁獲量が減っており、近海ものの鰹を使った“土佐節”はめったに作ることが出来ないのですが、2009年晩夏~初秋の時期、小ぶりの鰹が豊漁だったことから実現した、土佐節・鰹削り節(花かつお)の逸品です。竹内さんも久々に近海物の新鮮な鰹でたくさんの節を作れたことと、その仕上がりに満足なようで、嬉しそうに「花吹雪」の紹介をして下さいました。少し味見をさせて貰いましたが、まず口元で嗅ぐ削り節の香りも美味しく、口に入れた瞬間、鰹節好きには堪らない、旨くて思わずにやけてしまう程の風味の濃厚さに驚きました。

昔ほど家庭でだしを使わなくなったことや、外国産の安い鰹節の流通などの影響から、現在の高知県内の鰹節製造の主流は、あまり時間をかけずに作れる“生節”などの商品に移っており、本節の「土佐節」を製造している工場はわずかになっています。
また生産現場においては、熟練の鰹節職人の高齢化、後継者不足と、「土佐節」を取り巻く製造環境は厳しい状況にあります。
竹内商店でも、各ご家庭で手軽に使える“新節”や“生鰹”などの製造が多くなっていますが、それでも良い物は良い、「土佐節」製造の技術を残していきたい、との思いから、新しい技術を取り入れながらも、こだわりの伝統製法で質の良い本節の製造を続けておられます。
高生連としても、本物の味と良さを知り、受け継いでいくことが大事なのではないか、そしてそれが健康へと繋がって行くのではないかと思い、伝統的な味を守っている竹内さんを応援して行きたいと考えています。

「焙乾」途中の節の状態を確認している【竹内商店】代表の竹内昌作さん。
代表の竹内昌作さん

今回は「竹内商店」の鰹節製造現場を見学させて頂きました。
資料で読んだり、お話をお伺いしていましたが、実際にほとんどの製造工程を手作業で行っているのを目の当たりにすることで、伝統製法を守り続けることの大変さを実感し、またそれを支える職人の熟練の技の見事さに思わず見入ってしまいました。
そして良いものを作るためには、じっくりと手間暇をかけることが大切だ、という事を改めて教えて頂いた取材となりました。
最後になりましたが、お忙しい中取材にご協力を頂きました竹内商店の皆様、本当にありがとうございました。

文責:植木(高生連)

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